🌻自分が自分であるために —— 助産師・鈴木照美さんと「ひまわり」で迎える命の温もり

文:松山かな

📌この記事の3つのポイント

  • 鈴鹿で20年以上にわたり1,300人以上の命を迎えてきた助産所「ひまわり」の歩み
  • 助産師・鈴木照美さんが貫いた「自分が自分であるために」という生き方
  • 出産を“医療行為”ではなく、“人生の物語”として支える、ひまわりの人の力

はじめに:お産を「誰かに任せる」から「自分で選ぶ」へ

お産という出来事は、命のはじまりであると同時に、母としての“自分の再出発”でもあります。けれど現実には、医療や制度の中で「決められた流れ」に沿う出産が多く、「もう少し自分のペースで産みたかった」と感じるお母さんも少なくありません。

そんな中で、「自分の力を信じて産む」ことを支え続けているのが、鈴鹿市にある マタニティ・ハウスひまわり。ここで迎えるお産は、病院のように機械的ではなく、まるで家族の一員として見守られているような安心感に満ちています。

その中心に立つのが、助産師の 鈴木照美さん。「自分が自分であるために」——この言葉を人生の芯に据え、命と人に向き合い続けてきた女性です。

I. 原点は母の背中と幼い日の記憶

鈴木さんが助産師としての道を志したのは、幼いころに見た母の“生き方”がきっかけでした。家庭を支えながら、日々を懸命に生きるその背中。その姿は、幼い心に「人を支える強さ」と「命の尊さ」を深く刻みつけました。

一方で、鈴木さんは子どものころから活発で、どこか自由な心を持った少女でもありました。人の輪の中心にいるのが好きで、面倒見がよく、好奇心旺盛。けれど、同時に繊細で、人の痛みを感じ取る優しさも備えていたといいます。

そんな彼女が学生時代に抱いた夢は、「人の力になれる仕事がしたい」というもの。その思いが、看護師、そして助産師への道へとつながっていきました。

II. 人生を変えた、ひとつの出会い

看護師として経験を積む中で、鈴木さんの心に小さな疑問が芽生えました。「医療は確かに大切。でも、もっと“その人自身”に寄り添うお産があるのでは?」

そんなとき出会ったのが、開業助産師・安保ゆきの先生。病院ではなく、地域の中で女性たちと向き合うその姿に、鈴木さんは強く心を動かされました。

「お産は女性の人生でいちばん大変で、いちばん幸せな瞬間。その時を共有できる助産師は、本当に幸せになれる仕事なのよ」

この言葉が、彼女の生き方を決定づけました。“医療者として”ではなく、“人として寄り添う”助産師になりたい——。その思いを胸に、鈴木さんは病院勤務を離れ、地域の中で出産を支える道を選びます。

III. マタニティ・ハウス「ひまわり」誕生までの道のり

助産師として多くの家庭を訪ね、命と向き合ううちに、鈴木さんの中である願いが芽生えました。「お母さんが安心して、自然な形で産める場所を自分の手でつくりたい」

その思いを形にしたのが、マタニティ・ハウスひまわりです。設立に至るまでには数えきれないほどの苦労がありました。資金も、場所も、仲間も、最初はなかなか思うように集まらなかったそうです。

それでも、「命を迎える場所を、自分の手で建てたい」という信念は揺らぎませんでした。地域の人の支えと、共に夢を追った仲間たちの協力によって、ようやく「ひまわり」はその花を咲かせます。

IV. ひまわりに流れる“お母さん中心”の時間

ひまわりのお産には、分娩台がありません。お母さんが横になりたいなら横に、しゃがみたいならしゃがんで——。そのとき、その体が自然と選ぶ姿勢で出産を迎えることができます。

健診は完全予約制で、ひとりひとりにたっぷり時間を取ります。「赤ちゃんが動くのがうれしい」「夜、眠れない」そんな何気ない会話の中にこそ、お母さんの不安や想いが隠れているからです。

そして出産後は母児同室。生まれた瞬間から赤ちゃんを胸に抱き、「この小さな体が私の中から生まれたんだ」と実感できる、あたたかい時間が流れます。

V. 命をつなぐ物語:ひまわりの日々から

ひまわりには、たくさんの“命の物語”があります。ある冬の夜、雪がしんしんと降り積もる中で産声をあげた赤ちゃん。お母さんが「もう無理かもしれない」と涙を流したとき、鈴木さんはその手を握り、静かに「あなたの体がちゃんと知ってるから大丈夫」と語りかけたといいます。その言葉に背中を押されるように、赤ちゃんは元気に誕生しました。

また別の日には、上のお子さんが立ち会い、母の背中をさすりながら「がんばれー」と声をかけたお産も。その声に応えるように生まれた弟の泣き声に、家族全員が涙をこぼしたそうです。出産のたびに、笑顔と涙が入り混じる。そこにあるのは「特別なドラマ」ではなく、“人のぬくもり”そのものなのです。

VI. 鈴木さんが語る「仕事の幸せ」と次の世代へのバトン

鈴木さんはこう語ります。「開業助産師は、本当に幸せになれる仕事です」——この言葉は、決して軽いものではありません。夜を徹してお産に立ち会い、時には命の重さに心が震える日もあった。けれど、母と子の笑顔に出会うたび、「この道を選んでよかった」と心から思える——。

ひまわりで過ごした20年以上の時間の中で、彼女は何度も“命の奇跡”を見つめ続けてきました。そして今、次の世代の助産師たちにこう伝えています。「技術も大切。でも一番大切なのは、人の心を感じる力。 その心がある限り、どんなお産も、きっと素晴らしい時間になるから。」

おわりに:あなたの“自分らしいお産”のために

【代表:助産師 鈴木照美氏】
お産は“命の誕生”であると同時に、“母の再誕”でもあります。泣いてもいい、笑ってもいい、迷ってもいい。そのすべてを包み込みながら、ひまわりは今日もお母さんと赤ちゃんを迎えています。

ここでの出産は、医療ではなく、人生の一場面。あなたのままでいられる時間、そして「自分が自分である」ことを確かめる時間です。ひまわりの扉を開いた瞬間から、あなたの“新しい物語”が、静かに、でも確かに始まります。


助産所情報

助産所 マタニティ・ハウス「ひまわり」
住所:三重県鈴鹿市高塚町1066番地31
電話番号:059-370-4970
営業時間:9:00〜16:00
定休日:日曜日・祝日

松山かな(看護師/すずこれ編集長)

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