【第3部】猛暑と向き合ういちご農業|鈴鹿・福光園が作り続ける理由

すずこれ特集|福光園

【第3部】暑さと向き合う農業――それでも作り続ける理由|鈴鹿・福光園の現実

猛暑で変わるいちご栽培。補助金や設備投資の壁がある中でも、福田さんは「おいしいよ」と笑います。

📌この記事の3つのポイント

・近年の猛暑でいちご栽培は大きく変化している
・補助金縮小や設備投資の難しさという現実
・それでも福田さんは「おいしいよ」と笑う

はじめに

「最近は、とにかく暑いですね。」

福田さんはそう言って、ハウスの中を見渡しました。

いちごは冬の果物。
けれど、その準備は真夏から始まります。

そして今、その夏が、以前とはまるで違う。

1. 夜でも25℃を下回らない夏

いちごの苗は暑さに弱い。

水やりも、ただ与えればいいわけではありません。
25℃以下で与えないと、根腐れの原因になる。

しかし、近年は夜でも気温が下がらない。

だから福田さんは、朝にたっぷり水を与えます。

「タイミングを間違えると、苗が弱る。」

その一言に、緊張感がありました。

章姫や紅ほっぺは育てやすい品種でした。
でも、この暑さで状況は変わった。

暑さに強いうた乃や、かおり野へと軸足を移す。

それは、気候に合わせて“変わる”という選択。

農業は自然と共にある仕事。
けれど、その自然が、今は穏やかではありません。

2. 補助金の現実と設備の壁

暑さ対策の機械には国の補助金があります。

少し前までは、費用の50%。
今は23%まで下がりました。

夜間にポットを冷やす設備があれば理想的。
けれど、現実的には導入は難しい。

「なかなか、簡単にはいかないですね。」

その言葉は淡々としていました。

でも私は、一粒のいちごの価格の背景に、こうした数字があることを改めて考えました。

これから価格は上がるかもしれない。
収穫量も不透明。

12月の収穫が減り、収穫時期は短くなってきている。

苗の成長不良も、暑さが原因かもしれない。

一粒のいちごの裏側には、気温と、水と、補助制度と、労働時間がある。

3. それでも「おいしいよ」

厳しい話が続いたあと、福田さんは、ふっと笑いました。

「でも、おいしいよ。」

その言葉に、すべてが詰まっている気がしました。

完熟を待つ。
朝5時に起きる。
暑さと向き合う。

それでも、最後は「おいしい」と言えるいちごを作る。
それが、福田さんの答えなのだと思いました。

おわりに

私たちは、いちごを手に取るとき、その向こう側まで想像することは少ないかもしれません。

でも、もし少しだけ思い出してもらえたら。

夜でも下がらない気温のこと。
朝の水やりのこと。
静かに続く365日のこと。

そして、「完熟を待つ」という選択。

福光園のいちごは、ただ甘いだけではありません。
そこには、人の時間が積み重なっています。

鈴鹿の農業は、こうした一人ひとりの積み重ねで支えられている。
そのことを、私は忘れずにいたいと思います。

▶ 編集長・松山かなの感想

気候変動という言葉は大きすぎて、どこか遠い問題のように感じることがあります。

でも、福田さんのハウスの中では、それは毎日の判断であり、生活そのものです。

看護の現場でも、環境の変化は弱い立場の人から影響を受けます。
農業も、きっと同じ。

それでも、「おいしいよ」と言える人がいる。

その強さと優しさに、私は深く心を打たれました。

これからも、鈴鹿の農業を、食べることから応援していきたい。
そう思わせてくれる取材でした。

松山かな
(看護師/すずこれ編集長)
鈴鹿のお役立ち情報

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