【第1部】いちごは追熟しない|完熟にこだわる福光園のいちご哲学|鈴鹿

すずこれ特集|福光園

【第1部】いちごは追熟しない――
完熟を待つ人の覚悟|鈴鹿・福光園のいちご哲学

いちごは収穫後に甘くならない。だからこそ“完熟”を待つ。福光園・福田さんの静かな哲学に迫ります。

📌この記事の3つのポイント

・いちごは収穫後に甘くならない“追熟しない果物”
・福光園・福田さんは「完熟」にこだわり直接販売を選んでいる
・一粒のいちごの裏側には、静かな覚悟がある

はじめに

福光園の福田さんは、決して多くを語る人ではありません。

派手な言葉も、大きな理想も口にしない。
ただ、静かに、いちごを見つめ続けている。

取材中、ぽつりとこぼれた一言が、なぜか心に強く残りました。

「いちごは、追熟しないんです。」

その言葉から、すべてが始まりました。

1. 「いちごは追熟しない」という事実

市場に出回るいちごの多くは、まだ半分ほど赤くなった段階で収穫されます。

流通を経て店頭に並ぶまで、およそ2日。
その間に赤くはなります。

けれど、それは光合成による色づき。
甘さが増しているわけではありません。

「赤くなるのと、美味しくなるのは違う。」

見た目が整っていることと、いちばん美味しい瞬間であることは、必ずしも同じではない。

その事実を、私たちはどれくらい意識しているでしょうか。

2. 完熟を待つという選択

福田さんは、とにかく“完熟”にこだわります。

しっかり赤くなり、糖度がのり、香りが立ち、
いちごがいちばん輝く瞬間を待ってから収穫する。

そのため、流通に時間のかかるルートは選びません。
スーパーへの直接納品や直売が中心です。

「スーパーのいちごは、いちごの形をしたもの。」

決して他を否定する響きではありません。
それは、“自分はこうありたい”という、職人としての静かな矜持でした。

効率よりも、味のピークを選ぶ。
それは簡単なことではないはずです。

3. 何もつけずに味わってほしい

福田さんのいちごは、「何もつけずに食べてほしい」と言います。

練乳も砂糖もいらない。

おすすめの食べ方は、ヘタから。
いちごは先端にいくほど糖度が高くなります。
最後に、いちばん甘い部分がくる。

その順番まで考えている。

艶があるものを選ぶといい。
章姫や紅ほっぺは、少し形が不揃いな方が甘いこともある。

葉っぱが反っていると甘いと言われるけれど、それは品種による。一概には言えない。

言葉は飾らない。
でも、そこには確かな経験が積み重なっています。

おわりに

家に持ち帰ったいちごを、娘が手に取りました。

口に入れる前に、こう言いました。

「なんか、いい匂いする。」

甘い、より先に、香り。

完熟を待つことでしか生まれない香りがあるのだと、その瞬間、私は理解しました。

一粒のいちごの向こうには、朝5時から始まる一日があります。

赤くなるまで待つということは、効率よりも“いちばん美味しい瞬間”を選ぶということ。

福田さんは、それを当たり前のように続けています。

完熟を、待つ人として。

▶ 編集長・松山かなの感想

福田さんは、とても実直な方です。

声を荒げることも、自分を大きく見せることもない。
でも、「いちごは追熟しない」と語るその表情には、長年向き合ってきた人だけが持つ確信がありました。

私たちはつい、赤い色や形の整い方で選んでしまう。

けれど、本当に大切なのは、その奥にある時間と手間。

一粒のいちごが、ただの果物ではなく「誰かの仕事の結晶」に見えてきたとき、食べる時間は、少しだけ豊かになる気がします。

次回の第2部では、朝5時から始まる福田さんの一日と一年の流れを、もう少し深くご紹介します。

松山かな
(看護師/すずこれ編集長)
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